第37回臨床検査精度管理向上研修会 第20回検査部長・技師長連絡会議 報告

広島市立安佐市民病院 秋山 翼

平成30318日(日)広島県医師会館ホールにて第20回検査部長・技師長連絡会議ならびに第37回臨床検査精度管理向上研修会が開催されました。向上研修会に先立って開催された連絡会議では「広島県共有臨床基準(範囲)の導入経過について」(広島工業大学生命学部生体医工学科:新田和雄教授)、「臨床医の立場から」(広島市立広島市民病院:三好夏季医師)と広島県内病院の精度管理運用現状と臨床医からみた精度管理を用いた検査値の判読についての発表で大変興味深い内容でした。広島県共有臨床基準(範囲)の導入経過は7施設(広島大学病院、県立広島病院、広島市民病院、広島赤十字・原爆病院、広島市医師会臨床検査センター、福山臨床検査センター、(株)SRL)において福岡県5病院会の基準値を採用し、広島県全体の共有化の検討について調査していました。広島県内の基準範囲の共有化は可能と発表がありました。臨床医の立場からはJCCLS共有基準値を導入することで、どの病院でも同じ検査基準を設けることができ、臨床医の判断精度向上の重要な役割を担うことになると発表がありました。実際の臨床医の声を聞き、精度管理の重要さが充分伝わってくる内容でした。

臨床検査精度管理向上研修会では、広島県医師会会長の平松恵一先生より開会の挨拶があり、成績優秀施設への表彰、精度管理調査結果の評価・解説がありました。評価・解説で主な事項は、血液検査では今年度、単位間違いによると考えられる誤記入が11件と医療の信頼の失墜に繋がりかねないことを十分理解し、日常検査と同等に十分注意して報告するように注意喚起があった。輸血検査では試料6のウラ検査が相対的に弱い施設が多数報告された。それらの原因を調査するための追加アンケートでは、試料6のウラ検査では陰性と報告した施設すべてが試験管法であり、使用器具類の詳細より血漿使用量や判定用遠心機の影響があると推測された。前回反応増強剤としてアルブミンを用いる施設が多かったが、現在ではアルブミンの使用率は減少し、LISSPEGへの移行が進んでいると報告があった。一般検査では対象外問題ではあるが胸水中の細胞鑑別の正解率は低く44.1%であった。穿刺液中の細胞分類は臨床的意義の高い検査であり、今後も研修会などを開き知識を深め日常業務に活かしていきたいと締めくくられた。詳しい報告資料は日臨技ホームページのJAMTQCに掲載されています。

引き続いて行われた特別講演では、広島大学病院輸血部 藤井輝久先生に「輸血検査について~医師がどのように検査を見ているか~」と 三重大学医学部附属病院輸血・細胞治療部 田中由美技師に「三重臨床検査精度管理調査の輸血部門における新たな出題方法の試み」と題して講演がありました。藤井輝久先生には今の医学生の輸血検査に関する講義回数や時間を分かりやすくグラフに示していただき、その講義の少なさを初めて知り驚きました。また現場の医師の輸血に対する考えを聞き、医師と検査室とのコミュニケーションを充分に取ることの重要性を学びました。田中由美技師には三重県で行われている輸血精度管理に田中技師が主体となり不規則抗体の特異性のある抗体推定について精度管理調査対象外として設問用の抗原表を作成し、各施設に回答をしてもらい、県の輸血検査全体のスキルアップにつながる取り組みについての活動報告を聞きました。精度管理後はフォローアップとして評価項目のCもしくはD評価のある施設について三重県精度管理調査の実務委員がアドバイスや相談に応じる機会を設けるなど県内団結した取り組みをご紹介いただき講演を終了しました。