第36回広島県医学検査学会(東広島市)

第36回広島県医学検査学会を終えて

実行委員長 小松 忠司

 2019年2月23日、24日に、森田益子学会長のもと第36回広島県医学検査学会がグランラセーレ東広島にて開催されました。両日とも天候に恵まれ、たくさんの方に参加いただきました。昨年7月6日夜、これまでに経験したことのない大雨が降り、広島県、岡山県、鳥取県では大雨特別警報が発表されました。東広島市でも河川の氾濫や土砂崩れなど起こり、たくさんの被害がありました。その少し後に最初の県学会企画会議を開いたのですが、そこでの皆の意見は一致しており、この未曽有の災害を経験し、その活動をテーマに動き始め、今回の県学会のテーマを『災害に強い医療を目指して ~がんばるけん広島県~』として進めてまいりました。 初日のシンポジウムでは、広島JRAT、日赤救護班、看護師、そして臨床検査技師と様々な職域の先生方にシンポジストとしてお願いし、それぞれの立場から災害活動についてお話しいただきました。会場フロアからのご意見、ご質問など、非常に熱気のこもった熱心な、そして内容の充実したものであったかと思います。このテーマがいかに重要な、そして関心の高いものであるかということを改めて実感いたしました。

 2日目午前中の一般演題発表は12題あり、各施設において取り組まれたテーマを発表していただきました。ランチョンセミナーでは「肝線維化マーカーとしてのオートタキシンの可能性」として東ソー株式会社バイオサイエンス事業部の丸尾先生、「B型肝炎ウイルス感染症の現状と問題点」として愛媛県立中央病院副院長の道堯先生にご講演いただきました。それぞれ準備・ご協力いただきました栄研化学株式会社、シスメックス株式会社に感謝いたします。

 今学会では市民公開講座を2題準備し、1題目は東広島市危機管理課の中川先生に、『災害時における避難の方法 ~普段の心がけ~』ということで、豪雨災害に限らず災害に対する心がけをお話しいただきました。ジョークを交え、とても聞きやすく事前の備えがいかに大切であるか痛感いたしました。2題目は広島大学大学院教授の藤原先生に『豪雨災害に適応するたおやかな社会へ ~交通マネジメントの視点から~』ということで、交通機能不全がもたらす影響についてお話しいただきました。最後は急ぎ足となってしまいましたが、豪雨災害が起こってからの渋滞緩和対策、今後の展望などとても興味深い内容でした。 全体を通し、うまくいったところもあれば反省するところもありましたが、今後行われる学会運営に活かせていければと思っています。最後に今回の開催に当たりまして、会長をはじめ広臨技理事、また、格段のご尽力をいただきました実行委員の皆様、大変な時期に委員を選出して頂きご協力頂きました施設、さらには広臨技全会員、賛助会員の皆様のおかげで無事終えることができました。ありがとうございました。

第36回広島県医学検査学会レポート

 2月23日・24日の二日間、グランラセーレ東広島にて第36回広島県医学検査学会が開催された。心配した雪も降ることはなく、日中はあたたかな春のような陽気に恵まれ、多くの参加者でにぎわった。 今年のテーマは「災害に強い医療を目指して ~がんばるけん 広島県」。平成30年7月、西日本を中心に降り続いた豪雨はあちこちで土砂災害を引き起こし、広島の各地に大きな被害をもたらした。この豪雨による死者・行方不明者はあわせて114人。メディアで連日報道された各地の悲惨な映像は記憶に新しい。「災害」がテーマということで、シンポジウムや市民公開講座も災害についての話題が採用された。シンポジウムではリハビリテーション・医師・看護師・臨床検査技師が西日本豪雨災害の際に行ったボランティア活動について討論した。災害における避難所生活では、食料や日用品などの物資の不足はもちろんのこと、設備の不十分な施設での集団生活による感染症のリスク、ストレスの蓄積など、様々な問題が起こる。講演を行った各団体は、それぞれの強みを生かしてこれらの問題解決にあたったことを報告した。また、市民公開講座では東広島市より、このたびの豪雨災害について被害の詳細や今後同じような災害が起きたときの避難の方法や日ごろから準備しておくことなどについて、さらに広島大学の藤原章正教授より、交通や渋滞という観点から災害時に情報を共有することの大切さや自分ひとりのメリットよりも社会全体のメリットを考えたほうが、まわりまわって自分が安全・快適にすごすことができるようになる、というお話をしていただいた。一般市民の参加者に話を聞いてみると、「自分の身近でこんなに大きな災害が起こるとは思っていなかった。今回のような講演は災害への備えをしなければならないという危機感を与えてくれた。」と非常に好評であった。

 2日目の一般演題には県内の施設や大学から12題の演題が集まり、演者たちは少し緊張した面持ちで発表に臨んでいた。他施設の貴重な症例や自施設とは異なった検査の方法などに興味を持った多くの参加者から質問が飛び交い、非常に活気のある演題発表となった。 わたしはこの学会に企画の段階から参加したが、多くの人々に支えられて学会が成立していることを知ることができ、良い経験になったと思う。来年度の第37回広島県医学検査学会は広島市内で3月に行われる予定だ。みなさんも足を運んではいかがだろうか?       広報部 糸谷

第36回広島県医学検査学会優秀演題賞をいただいて

社会医療法人千秋会 井野口病院 
臨床検査科  江村

 この度は、「当院での医療安全における臨床検査技師の役割 ~急変時対応シミュレーション~」におきまして、優秀演題賞という名誉ある賞をいただき、驚きと同時に大変光栄に思っております。学会では実行委員(裏方)を務めさせていただき、ようやく学会も終盤になり、一安心していた所に名前を呼ばれ、2日間の疲れも吹っ飛びました。 当院での取り組みが評価されたことを大変嬉しく思います。  今回、当院における臨床検査技師の医療安全への関わりと、一つのインシデント事例から臨床検査技師が中心となり、多職種で検討・対策・改善を行った事例について発表させていただきました。 当検査科では検査室外での業務も増えてきた為、他部署と関わるインシデント事例が年々増加しています。検査科内だけでは解決できない事例が発生した時には、専用の分析シートを使用し関連部署と共同で対応を検討しています。

 今回の事例は検診フロアで発生した医師や看護師、検査技師、事務職員など多職種が関連した、ドック受診者の急変事例でした。その対応策として、臨床検査技師が中心となり「マニュアル改訂」「バイタル測定機器導入」「急変時対応と職種間での連携方法の習得」等を検討・実行しました。特に事例発生時の対応能力を向上させる為、リスクコントロール委員協力のもと、疑似体験によるシミュレーション形式の研修を実施しました。研修中は皆さん真剣に取り組まれ(演技もスゴイ!)、研修会後のアンケートでは多くの方が業務上役に立つ研修であったと答えていただきました。 事例対策後に患者が意識を失い倒れる事例があり、シミュレーション研修を受けた職員は落ち着いてマニュアル通り対処し、他部署との連携もスムーズに行えました。今回の研修は大変意味があったと実感できた瞬間でした。しかしまだ対応に自信がない職員もいた為、今後も継続した研修が必要と思われます。 これからもリスクコントロール委員の一員として検査科だけではなく多職種と連携し問題に取り組む事で、病院全体における安心・安全な医療に繋がると考えています。 最後に、審査していただいた先生方、学会実行委員の皆様に感謝申し上げます。